【写真】「アートクレイ+彫金技法の[基礎]」を出版した千葉香さん
「アートクレイ彫金技法の基礎」 千葉香さんが出版
盛岡市中ノ橋通1丁目の千葉香さんがこのほど、美術出版社から「アートクレイ+彫金技法の[基礎]」を出版した。59ページ、1800円(税込み)。13日から全国で発売を開始し、県内では20日ごろから店頭に並ぶ。難しいと言われてきたアートクレイシルバー(銀粘土)と彫金の接合技術。千葉さんが10年をかけて研究開発した同技術を分かりやすくまとめている。
粘土状で焼くと純銀になるという銀粘土。彫金では難しかったような細い線を作ったり、竹串(くし)やピンセットで直接模様を描けるところが特長。一方で地金と接合できず、強度が低いため、趣味的な扱いの枠を超えられなかった。
金属同士を接合させるには、熱で溶かした合金のロウを挟むロウ付けを行う。銀粘土の場合はスポンジ状の構造のため、火を当て過ぎるとロウがしみ込んでしまい、接合できないと思われていた。
千葉さんは地金同士と同じように、銀粘土の焼成パーツと地金の接合面をぴったり合うように調節。焼成パーツ側の接合面を鏡面になるように磨くことでロウのしみ込みを抑えることに成功。銀粘土で作った部分に地金の土台を接合させることで強度を増し、一般のジュエリーとしての使用に耐える技術を確立した。
彫金職人の間で銀粘土がおもちゃとして見られているのが悔しかった。「新しくても素晴らしいものは認め、取り入れていくべき」とあきらめずに研究を続けてきた。
新技術を開発した職人は、特許を取って自分だけのものにすることが多いという。本を出しても技術をすべて明らかにせず、自分だけしか知らない部分を残すことがほとんど。
「技術は次世代に受け継ぐべき」と言う千葉さん。特許で囲ってしまわずに、同書には自分の持つ技術を余すところなく掲載。読んだ人が自分の技術を超えて、さらに飛躍してほしいと願っている。
同書はジュエリーの専門学校や大学の彫金科などでの使用が決まり、中級と上級編の出版も予定されている。問い合わせは創作ジュエリーアトリエ・シルバーアートカオリ(電話番号は019-652-5725)まで