2004年5月25日 【岩手日報】掲載
●銀技法に新技法 ~銀粘土+他の金属 造形自在に~
盛岡市中ノ橋通1丁目のジュエリー工房主宰 千葉香りさんは、アートクレイシルバー(銀粘土)を他の金属に結合するアクセサリー制作の新たな技術を編み出した。
千葉さんは解説本「アートクレイ+彫金技法の〔基礎〕」を美術出版社から今月出版し、「次代の作家たちに伝えたい」と技術の広がりを願っている。
銀粘土は、銀粉と接合材を練りこんだ新しい素材で、焼くと純銀が残る。銀の表面に多数の凹凸を施すなど、複雑なデザインは、従来彫金の難しい技術が必要だったが、銀粘土なら自由に造形ができ、趣味でアクセサリー作りをする人が増えている。
スポンジのような状態で、ろうや硫酸が染み込むため「ろう付け」による金属との結合や、真っ黒に焼いた後の「酸洗い」は難しいとされていた。千葉さんはろう材が解ける温度や金属の融点、炎の当て方を研究し、いづれも成功させた。
これにより、宝石をとめる石枠や指輪の輪の部分など、強度が必要な箇所は地金で作り、細やかな装飾部分は銀粘土で表現することが可能となった。
解説本は59ページ。必要な材料や道具、バーナーの使い方、ろう付けや酸洗いのポイント、手順などを、写真付きで詳細に解説。「絹糸リング」など4つの基本的なアクセサリーの作り方、「よくある質問と回答」なども掲載し、初心者が無理なく取り組めるよう工夫した。1890円。
千葉さんは宮城県仙台市出身。結婚して盛岡市に住み、15年前から彫金や銀粘土造形を始めた。銀粘土を磁器や銅と結合したり、銀の表面をオレンジ色に発色させた作品を次々と発表し、コンテストで多数の賞を獲得している。昨年4月に同市内に教室兼工房を開いた。
「まだまだ挑戦して作り続けた石、自分の技術を伝え続けたい」と本の出版を喜んでいる。
山崎淳一岩手工芸美術協会理事(彫金、盛岡市)は、「銀粘土の作品は個性的な形がたくさんあって面白い。結合の技術があれば、彫金と銀粘土双方の可能性がさらに広がるだろう」と評価している。千葉さんは結合技術を用いて制作する教室を、7月から開催予定。