2005年8月25日 【マ・シェリ№553】掲載
ジュエリーは私の心
ジュエリー作家 千葉香さん
~自ら生み出した
新しい接合技術~
涼やかな銀のブローチやペンダント、指輪にチョーカー。あるものは曲線だけで構成されていたり、またあるものは銀の絹糸をふんわりまとっていたり…。盛岡市在住の千葉香さんが作るジュエリーは、銀の硬質なイメージを覆すような、柔らかで優美な雰囲気が漂っています。
いずれの作品も、驚くほど細やかな細工が施されているのが特徴で、自分を美しく飾りたいという女性の心をくすぐるものばかり。この細やかな銀細工は、アートクレイシルバー(銀粘土)の技法と、彫金技法を融合して生み出されたもの。
純銀の微粉末と水、結合財を混ぜて粘土状にしたアートクレイシルバーは、細い線を作ったり、竹串などで直接模様をつけたりと、自由自在な成形が可能。一定の温度で焼くと、純銀だけが残る仕組みになっています。たがねでコツコツ彫っていく彫金に比べると、比較的手軽なクラフトですが、残念ながら郷土は今ひとつ…。
そこで千葉さんが試行錯誤を重ねて開発したのが、今までは難しいとされてきた、地金とアートクレイの接合技術でした。造形力はあるものの強度が足りないアートクレイと、強度は問題なくても造形には時間も技術も必要な彫金。一般のジュエリーとして使用にに耐えうるものを作るためには、この両者をつなぐ接合技術がどうしても必要だったのです。
~ひとりで仕上げる一品制作~
一般的にジュエリーは「デザイン」「制作」「石留め」など、それぞれの工程に専門の職人がいて、分業化が進んでいます。けれども千葉さんは、「すべての工程を自分ひとりで作りたい」と孤軍奮闘。様々なコンテストで入賞を繰り返すようになった今でも、毎月東京に出かけては新たな技術を学び続けています。
「私、技術の習得には貪欲なんです(笑)。 盛岡にクラス1人の人間が、本気でジュエリー作りに取り組んだらどこまでできるものなのか、やっぱり挑戦したいですね」
開発した接合技術は特許申請中。また、そのノウハウは多くの人にアートクレイシルバーと彫金に親しんでもらいたい、という思いから、2冊の著書で公開。最近ではべっ甲や漆など、更なる異素材との組み合わせに夢中になっているのだとか。
「美しいものが好き」と話す千葉さんの胸元には、自身の手によるペンダントがキラリ。個性豊かな輝きを放っていました。