2005年6月2-日 【盛岡タイムスWeb News】掲載
彫金技法で広がる
アートクレイの世界
千葉さんが「応用編」
盛岡市中ノ橋通1丁目の千葉香さんが、このほど美術出版社から「アートクレイ+彫金技法の〔応用〕」を出版した。59ページ1890円。7月から全国で発売する。
昨年の5月に同社から出版した「アートクレイ+彫金技法の〔基礎〕」は、千葉さんが現在特許を申請している新技術、アートクレイシルバー(銀粘土)と彫金の接合技術を紹介。
それを踏まえて今回は、4つのジュエリーの創り方を紹介しながら、銀と異素材との融合を提案している。
基礎編は初版の五千部が、発売後1週間で完売。その後も順調に増版されるほどの人気を博したため、昨年9月に応用編の出版が決定した。
今回のイメージは、伝統工芸の「江戸べっ甲」と組み合わせた「タートルズ・ドリーム」。べっ甲を切り出したり、平らにするという下準備からはじめ、銀粘土で模様をつけた地金の枠と組み合わせるところまで、丁寧に解説している。
「べっ甲と組み合わせてみたい」と思ったのは数年前。定期的に東京の伝統工芸士の下に通い、その技術を習得した。
ワシントン条約により素材の入手が難しくなった現状を知り、伝統技術の衰退を恐れる職人の思いを感じた。伝統工芸を、自分の銀の技術と組み合わせて未来の人に伝えたい、という願いから、今回の掲載を決めた。
「マレーナリング」は、レースの花を基にしたリングヘッド。レースの上に直接、銀粘土のペーストを塗って焼成させる。レースの繊細で柔らかい質感を、硬質な銀で表現できるのは、銀粘土ならではという。
変色しない耐硫化銀粘土をしようした「満ち潮のロマンス」は、ヒトデの形のチョーカー。同じ作品を沢山つくるために、シリコンを使って型を取る技法を紹介している。
「ミラクル」は紫外線で乾燥させるUV樹脂を組み合わせたかんざし。銀粘土の模様の上にちりばめられたオパールを、透明な樹脂で閉じ込めている。
千葉さんは「伝統を固く守ってきた職人の技術と、新しく開発される技術を組み合わせる人がこれまでいなかった。
自分は特別なことをしたわけではなく、美しいものを作るために最適な技法を選択しただけ」という。「これからも異素材との組み合わせをどんどんやっていこうと思う」と意気込んでいる。
出版を記念した個展は、同市菜園1丁目かわとく壱番館キューブ店かわとく工芸館で、12月中旬に開かれる予定。問い合わせは創作ジュエリーアトリエ・シルバーアートカオリまで。